★中学生の読書メッセージ!★佳作

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教育ルネッサンス賞

「アルジャーンに花束を」

主人公、チャーリィ・ゴードンは、知能障害を持つ三十二歳の青年である。彼はある時自らが通う知能障害成人センターの教師に勧められた手術を受け、天才へと変貌する。
この本の中で、印象に残った場面が二つある。
一つ目は、チャーリィが突然天才になったことで、パン屋の店員から敵視されるようになる場面だ。店員から敵視されるようになったことで、最終的にチャーリィはパン屋をクビになってしまう。今まで自分達より下の人間だと思って笑い物にしてきたチャーリィが、今度は自分達よりも上にいて、自分達のことを見下している。そう思ってパン屋の店員達は、チャーリィを敵視するようになってしまったのだと思う。自分より下、もしくは自分と同じくらいの能力を持っていた人間が、いきなり天才になったとしたら、私もそういった思いを抱くだろう。突然幸運を手に入れたその人を妬んだり、置いていかれたような気分になったりするかもしれない。そういった醜い感情は、人間誰しも持っているのではないだろうか。
二つ目は、カクテル・パーティの時、チャーリィが、手術を計画したニーマー論になる場面だ。チャーリィは、自分を実験動物のように扱い、自分がお前を人間にしてやったんだ、という態度の二―マー教授に対して怒りを覚えていた。また、ニーマー教授も手術した相手が感謝もせず、自分達の仕事を危険におとしいれていることに苛立っていた。そうしたお互いに対する不満が、酒に酔ったことで爆発してしまったのだと思う。知識を得る前の方がよかったのか、というニーマー教授の問いに、チャーリィはある意味ではそうだ、と答えた。チャーリィは知識を得たことで、友人だと思っていた人から敵視されるようになった。何も知らずに笑っていることができた、以前の方が気楽でよかったと、そう思ったのだろう。知識だけが全てではないことを、チャーリィは身を持って知ったのだと思う。
最終的に、チャーリィは再び精神遅滞者に戻ってしまう。けれど、以前のようにパン屋の店員と友達になることができた。天才だったときに経験した様々な出来事のおかげで、チャーリィは以前よりも深い人間になったと思う。
この本では、人間の醜さが包み隠さず書かれている。人間とは何か、人間の幸せとはどういうものなのかを、考えさせられる本だ。「知識というものは、テストの点数だけではありません。他人に対して思いやりをもつ能力がなければ、そんな知識など空しいものです」――これは登場人物を通して伝えられた言葉ではなく、著者自身の言葉として書かれていたものである。人よりたくさんの物ごとを知っていても、それを人と共有して役立てることができなければ意味が無い、ということを伝えたかったのだろう。
私は今年受験生だが、テストの点数だけに縛られず、年齢にふさわしい、きちんとした中身のある人間になりたいと思う。

鴻巣市立鴻巣南中学校3年 木村菜穂 
  
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